このページは管理人が学生時代にUSMLE Step1を受験したときの情報を元に書かれています。そのため内容は医学生向けに書かれていたり、情報が古かったりしますが御了承ください。最近の試験情報に関してはリンクのページを参照にしてください。また、新しい情報をお持ちのかたはぜひお知らせいただきたいと思います。また、この原稿は以前存在したupNet向けにかかれたものです。現在upNetは活動を停止してしまったのでその内容をそのままダラス通信へと引き継ぎました。
'97 upNet FirstAid for Step1
医学生による医学生のためのUSMLE Guide
前書き
このガイドブックはUSMLEを受験する学生の救急箱として書かれた本です。USMLE(United States Medical Licensing Examination)はアメリカの医師資格試験ですが、日本人の受験者がわずかなため試験に関する正確な情報がなかなか手に入りません。
いくつかの試験に関する記事や本は出版されていますが、その多くは日本の医師免許を取得した医師によってかかれているため、臨床の知識の乏しい医学生にとってはあまり参考にはなりません。
本来、USMLE Step1は、医学部5年生で受験することを前提としているため、適切な試験に対する情報があれば決して難しいはずはありません。そこで、私たちは大阪大学医学部学生を中心として、upNet(USMLE
preparation Network)結成して、USMLEに関する情報を収集して、勉強会を行っています。
この本は1996年の受験体験を含めて作成されたものです。皆さんも、このガイドを参考にしてUSMLEに一発で合格することを期待しています。
このページの著作権について
このページの情報と著作権はupNetに属しています。但し、このガイドは自由にコピーして無料で第三者に配布することができます。この場合は内容を変更しないで下さい。
このガイドの内容に関してはできる限り最新版を提供したいと思っていますので、ご意見ご質問はupNetまでお問い合せ下さい。このガイドの内容に関しては責任を持ちますが、このガイドに起因するあなたの試験結果に関してはいっさい責任を持ちませんので、あしからずご了承ください。。
情報提供のご協力について
このガイドは皆さんより送られた情報を基に作られています。今後、USMLEに関する情報、参考書等推薦できるものがありましたらupNetの方までお送り下さい。
また、step2、アメリカでの病院実習を含めたガイドも逐一作成していく予定なので、是非おねがいいたします。
USMLEについて
私たち日本人が臨床研修を受けたり、Fellowshipとしてアメリカで医師として働く場合はアメリカの医師免許が必要になります。そのためにはECFMGのCertificationを取得しなければなりませんが、それにはいくつかの試験に合格することが必要になります。合格する必要がある試験はUSMLE Step1, Step2, English test, CSA(Clinical Skill Assessment)の4つがあります。
USMLE Step1はAnatomy, Behavioral Science, Biochemistry, Microbiology, Pathology, Pharmacology, Physiologyの7科目があり学部4年終了後に受験することができます。 その後5年終了後にstep2を受験することになります。step2の内容はInternal Medicine, Pediatrics, Ob/Gyn, Psychology, Surgery等臨床科目になります。さらに、English testというTOEFLに似た形式のテスト、CSAという診断の実技試験に合格する必要があります。
但し、step1は基礎といっても臨床的な内容がかなりは言っているので、臨床講義の終わっていない学部生にとってはかなり難しいものになります。さらにBehavioral scienceという日本にはない科目が入っているので、これを以下に攻略するかが鍵になるでしょう。
2. ECFMG取得までのschedule
ECFMG取得までのscheduleの例を、学生の間に取りきってしまう場合を想定して下に挙げてみます。
1. step1 5年生の6月もしくは10月
基礎と臨床講義が終わってがすべて終わって、ポリクリにはいる前がいちばんよいでしょう。この試験の勉強法は直前のどれだけ詰め込めるかが重要になってくるので、試験前に余裕がある時期を選んだ方がよいでしょう。
2. English Test 5年生の3月
これはTOEFL550点で振り替えがききます。しかし実際は600点は必要だと思われます。事前に勉強もかねてTOEFLも受験しておいた方がよいでしょう。これはstep2と同時期に行われます。
3. step2 6年生の8月
この試験はポリクリが終了して時間に余裕がある6年生の8月がよいでしょう。内容は日本の国家試験に近いものなので、国家試験の勉強と平行して行うと効率的でしょう。
4. CSA
この試験は1998年6月行こうに行われます。試験の形式等はCSAのpageをご覧ください。また情報が入り次第お伝えします。
実際は、step 2から受験することもできますから、日本の国家試験の後にstep2を受験して、その後大学院生の時など時間に余裕があるときにstep1を受験する方が一般的なパターンだと思われます。
3. 全体的な対策
まず勉強を開始するに先立ってAppleton&Lange社の"First Aid for Step1"を手に入れる必要があります。USMLEに関する情報、受験対策等はすべてこの本の中に書いてありますので、できるだけ早く手に入れて熟読しておく必要があります。つまり赤本のようなものです。
さて、医学部学生にとって、この試験攻略の2本柱は“生化学”と“病理学”になります。
まず、生化学ですが、この科目はSTEP1の中で最も出題割合が多く、また本意も膨大で勉強するのに時間がかかるので、早めに始める必要があります。
病理学の方は出題の割合はさほど多くないものの、病名や症状に関する英文が多量に出てくるので“英語”としての勉強に非常に時間がかかります。例えば“吐き気”や“めまい”等の言葉も、日本語では素人でも知っているような単語になりますが、英語にするとなかなか出てきません。
この2科目に関しては早くから(4年)始めた方がよいでしょう。USMLEは膨大な問題文を短い時間で読みこなす必要があるので英語の勉強のためにも早くから始めることをおすすめします。
また、Behavioral scienceは日本にはない科目ですが、少ない勉強料で高得点を取ることが可能ですから、やったことがないからと捨てることなしにしっかり勉強した方がよいでしょう。それに対して、一般解剖は出題数が少ない上に、勉強量の割にはなかなか得点を上げにくいので、解剖が特に好きでなければ捨ててしまってもよいでしょう。
まず、最初にUSMLEの試験の概略と難易度を知るためには"Review for USMLE Step1(Willam&Wilkins)" とりあえず1回分時間を決めて解いてみるのがよいでしょう。私たちの見たところ、この問題集がいちばん実物に近いと思われます。
くれぐれも念を押しておきたいのは、この試験は受け直しがききません。一回合格したらその点数を変更することはできません。不合格だった記録も残って、多くの州では3回以上落ちたら免許が取れないこともあります。
つまり、この試験は十分な準備を行って、一発で合格する必要があります。
4. 試験対策
1. 全体
先にも述べましたが、"First Aid for Step1(Appleton&Lange)"をまず手に入れて熟読する必要があります。これらの本は東大や京大の生協にはには比較的そろっています。そうでなければ書店に取り寄せてもらうか、米国まで買いに行きましょう。問題集等は日本で手に入れるには大変手間がかかります。場合によっては取り寄せに3ヶ月位かかることもあるので早めに買いそろえておきましょう。
次に、模擬テスト集ですが、"Review for USMLE Step1(Willam&Wilkins)"いわゆる赤本か"Review for Step1(Appleton&Lange)"いわゆる黒本がおすすめです。これは勉強を始める前に難易度を見るためと、仕上げに時間配分を決めるために使用します。とにかく一度解いてみて下さい。一応60点が合格点のようです。
全般に、シンプルシリーズ等簡単な日本の教科書で勉強した後に、えUSMLE用の問題集と米国で一般的な教科書で勉強するのが効率的だと思います。
2. 辞書について
USMLEの勉強をする上では辞書の出来というのは非常に重要になってきます。ともかく電子辞書を薦めておきます。勉強の効率が断然違います。
英和にはSONYのリーダーズが良いと思います。和英には京大のサイトに無料の医学辞書があるのでそこからダウンロードすると勉強がはかどります。余裕のある人はHarrisonのCD-ROM版を買ったら、検索が早くできるでしょう。
4. 各論
1.Anatomy
[傾向]
Cell Biology, Embryology, Gross anatomy, Neuroanatomyの分野に分かれていますが、Cell BiologyとHistologyに重点が置かれていて、Gross anatomyは出題が少ないようです。Gross anatomyは、はっきり言って労多くして益が少ないので捨ててしまってかまわないと思います。Embryology, Neuro anatomyは問題集とFirst AidのHigh Yield Factsの分だけでも十分だと思います。Cell Bioloogy, Histologyは写真も出題されるので、教科書の写真もよく覚えておく方がよいでしょう。
[推薦]
問題集は"Anatomy(J&S)"がよいでしょう。ただ、 Cell Biology, Histologyに関しては問題が少ないので、日本語の教科書をよく読んでおいた方がよいでしょう。 Cell Biology, Histologyは考える問題よりは知識的な問題が多いので、問題集を解かなくても十分だと思います。Gross & Neuro Anatomyは考える問題がほとんどなので、問題集でじっくり考え方を学んだ方がよいでしょう。
参考書は日本語のなれた本を使えばよいでしょう。
2.Behavioral Science
[傾向]
日本にはない科目なので取っつきにくいですが、少ない勉強で高得点がとれるので勉強する価値があります。日本でこれに当たる科目は精神科、行動科学、統計学それから公衆衛生をあわせたものになると思います。Behavioral ScienceにはSex scienceなどの分野も含まれていて、結構おもしろいと思います。また、統計学はアメリカ人が数学が苦手なのか、簡単な問題しか出ないので確実にこなしておきたいところです。Behavioral Scienceには米国の医療制度をも含まれていますが、この分野の出題はないと考えられます。
[推薦]
"Behavioral Science(BRS)"がいちばんわかりやすいでしょう。内容もよくまとまっているのでこの1冊だけでも十分だと思います。先に述べたように、この本のうち医療制度に関する部分22章以降は勉強する必要はないと思われます。ただ、精神科的内容と統計学は英語での説明ではわかりにくいので、細かい用語などは日本の簡単な精神科、統計学の教科書を使った方がよいでしょう。
Sex scienceはBehavioral Scienceの中でもかなり出題されるのでしっかり考え方を学んでおくことが必要になるでしょう。
3.Biochemistry
[傾向]
これが出題の中心になります。また難易度も高いので十分な準備が必要になります。分野は生化学、分子生物学、遺伝学になりますが、どの分野からも大きく出題されます。この科目は問題集だけではなくてStryerなどの教科書をまるまる1冊勉強するつもりが必要でしょう。但し、Biochemistryは語学によるハンディーキャップが少ないので図版を元にして頭にたたき込んでいったら必ず得点源になります。また我々日本人にとっては得点源にする必要があるでしょ。
[推薦]
なんと言っても"Biochemistry(Lippincott)"の青本がよいでしょう。説明、問題ともにしっかりしているので、これを中心に勉強すれば学習効率がよいでしょう。但しこの本は分子生物学、遺伝学の分野には弱いので、"Biochemistry(BRS)"を問題集として使うか、"Stryer"の"Biochemistry"に付属している問題を解きこなすのもよいでしょう。
4.Microbiology
[傾向]
アメリカの臨床医学は、日本に比べると感染症を重要視しているようなので、細菌学に関してもかなり出題されます。問題集では感染症の種類と抗生物質のような臨床的なことがよく載っているので
すが、実際の問題はどちらかというと細菌の構造のような、基礎的な出題が多かったように思います。予想していたよりは出題量は少なかったと思います。ただし、日本に内感染症も多いので、日本の教科書だけで勉強すると大きく落とすことになります。
[推薦]
問題集は"Microbiology(J&S)"を使いました。この問題集は網羅的には作られていないのですが、十分対応できました。それほど気合いを入れなくても大丈夫だと思います。先にも述べたようにライム病のようにアメリカで多い病気についてはしっかり勉強しておく必要があります。
5.Pathology
[傾向]
学生にとって一番難関になるのがこの病理学だと思います。かなり臨床内科的なことが出題されるので、まだ内科を勉強していない学生にとっては大変なことと、英単語が、病名、症状ともになれないものが多いいので。勉強するのに非常に時間がかかります。
[対策]
ともかく早くから勉強することです。最初は英語を読むだけでかなり苦労すると思います。チャート程度の内科は理解しておいた方が勉強しやすいと思います。推薦書としては"Pathology(J&S)"が良いと思います。
6..Pharmacology
[傾向]
薬理学は、生化学と一対になって出題されます。その内容は大きく分けると、生化学的な薬理と、臨床的な薬の適応に分けられますが、出題の大部分は臨床的な薬の適応→薬理作用→生化学的機構という風に問題が作られているので、どれか一つでも落とすと正解が選べないようになっています。
[推薦]
"Pharmacology ( Lippincott )"の赤本が断然良いでしょう。日本の薬理学の本に比べても非常にわかりやすくできています。これは、先に挙げた生化学の本ともリンクされているので統合的に勉強するには、もっとも優れていると思います。ただし、この問題集は出題形式が古いのでそこのところがネックです。
7.Physiology
[傾向]
生理学は完全に日本のものと同じような問題です。日本人の学生にとっては一番とりやすい科目の一つになるでしょう。
[対策]
というわけで、対策としては日本の教科書を利用して行うのが一番良いと思います。勉強するときに単語を調べながら行っていけばいいと思います。問題集には"Physiology (J&S)"を使用しました。
更新記録
●2002年5月1日:新規掲載
●2002年7月5日:更新しました